Teenage Fan Club #11 2008 Plastic figures, hot glue Photo Eric Courtesy the artist |
ペットボトル、フィギュアなど身近な工業品を大胆に結合させた、コミカルかつどこか不穏な作品群。流木からD I Yショップに並ぶ木片までを奔放に組み合わせた、魔術的にも見えるシリーズ。そして、白地図の輪郭部を切り貼りして新たな地形を描く試み。「接続癖」とでも呼びたい金氏の表現の根源は、どこにあるのか。
「例えば都市というものも、がっちりした構造物が溶け合いつつその境界は曖昧だったり、そこに生きる僕らは自然の産物であったりする。そんな中で、何かが同時に、関係し合いながら進行していく状態にリアリティを感じます。作品制作でも何かを外したり、足してみたりの繰り返しで、完成後の展示作品にこっそりそうしてしまうこともあります(笑)」
創作は、シンプルな欲望から始まることも。トレードマークのひとつと言える、結合物を覆う白い樹脂も、初めはただそうしたい、という衝動からだった。
「すると、樹脂で覆われることでモノの元々のかたちに空白が生まれる。消えてしまうのでなく、存在感のある空白になったんです。木のシリーズは、自然のままの形や、廃材、フェイクの木片も使っていますが、寄せ集めると、もともとひとつの塊だったようにも見えてくる。それが各々の世界を行き来するような感じもして……。どちらにしても、予想外の形や、計算しきれない要素も取り込みたいのだと思う」
見慣れたものを、遠くに飛ばす。そんなことをよく考えるという。幼いころから、積み木や身の回りのモノを一緒にして遊んだ。父親はプロダクトデザイナーで、金氏少年には用途のわからないモノもたくさん自宅にあったという。そんな中で、美術家を目指してきたというより、気付いたらやりたいことはどうやら現代美術と呼ばれているのだな、という感覚だった。
「大学進学前に行った美術展で、赤瀬川原平の作品を初めて観たんです。『宇宙の缶詰』などを前に、これならわかるし、これでもいいんだ、と自由になれた気がした。音楽も好きで、ソニック・ユースのジャケットにあったゲルハルト・リヒター、マイク・ケリーらの表現からも、現代美術というものに興味を持ちました」
制作時には、常にルールを設定する。例えば使用素材を「骨に似た日用品」や「透明なもの」に揃えるなど。その小さなルールでモノの意味が変わり、既製品も、自ら粘土でつくったオブジェも境目がなくなる。
「ゼロからつくるものだけが素晴らしい、とは言い切れない気持ちがある。面白いものは周囲にたくさんあるのだから、それを使わない手はないし、そうしないのは不自然だとも思う。パーツが上手く組み合わさったときなどは、ある種の快感もあるんです」