小谷元彦インタビュー|ART iT 📄


彫刻への帰還と、未来への船出

取材・文:内田伸一
ポートレート:永禮賢


ART iT (アートイット) 2007年 10月号 [雑誌]ART iT (アートイット) 2007年 10月号 [雑誌]
(2007/10/17)

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Odani Motohiko
1972年京都府生まれ。彫刻、映像、写真などを用い、身体の「変異」や「変容」をテーマに近未来的世界を展開する。
http://www.yamamotogendai.org/japanese/artist/odani.html


彫刻出身の新世代として登場し、観る者の痛覚を刺激するような異形の美を創造してきた小谷元彦。映像・写真など表現法の多彩さでも知られる作家はデビュー10年目の今年、ふたたび彫刻表現に本格的に注力する。

「振り返ると、一時期ノリノリで彫刻を作っていたのが、やがて自分の引き出しが多いことと出力方向との関係にジレンマを感じ、彫刻への近親憎悪も芽生えて、複数メディアを取り入れたように思います。ただ、どこかで彫刻に還元せねばとの思いがあり、ここ3年は自分を鍛え直す時期だった。技術的にも、思考の面でも、です」

この夏、3年ぶりの個展『SP2 New Born』で見せた新作彫刻群は、異界のクリーチャーの化石標本のようでもある一方、渦巻く螺旋や躍動する竜のような造形は作家の強い意思の表出とも見える。驚異的な精巧さが生む、不穏なダイナミズム。小谷は自らの新章開始の過程で強く惹かれたものとして、イタリア未来派の画家・彫刻家、ボッチョーニの彫刻観を挙げる。


SP2 New Born 2007 Courtesy Yamamoto Gendai

「移動や変容、ダイナミズムやスピードの概念を彫刻にどう収め得るかという点で、まさに未来派的な関心がいま自分の中に強くある。かつてボッチョーニが“ ひからびた芸術” としての現代彫刻に、復権の可能性を抱いた点にも共感します。僕の場合は日本の彫刻史を見直しての話ですが。進化が遅いという言い方が適切かどうかわかりませんが、歴史的連続性や参照の試みも乏しいようにも感じます。自分はいまそれとは別の場所に、最短距離で向かいたい」

もはや感覚も麻痺するほどの速度で変容し続ける現代に、かつて未来派絵画技術宣言が叫んだ「宇宙的ダイナミズムの中で『瞬間』を切り取ったものではもはやなく、単純にダイナミックな感情そのもの」なる表現は生まれ得るか。小谷がいま見る現在・未来は、20世紀初頭とは別の希望と不安とを内包する。その手で削り出すスパイラルが彫刻表現の核へと上昇するのか、またはその核から大胆に拡張していくのか、注目したい。

「これから続けて発表する作品には、キャッチーなものも、渋すぎるもの(笑)も含まれる。でも自分のプロジェクトの全体像には必要だから、すべて作ります。以前は変幻自在の“ 実体なきスタイル”にも魅力を感じたけれど、いまは自分がやるべきこと、自分にしかできないことに集中したい。そして、仏像のように、数百年後の人間ともコミュニケートできるものを作りたい」
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