大巻伸嗣インタビュー|ART iT 📄


「永遠と一瞬」への案内人

取材・文:内田伸一
写真:永禮賢
ART iT (アートイット) 2008年 10月号 [雑誌]




Ohmaki Shinji
1971 年、岐阜県生まれ。東京都在住。東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、同大学院美術研究科彫刻専攻修了。シンプルな素材から、綿密かつ大胆な世界観を現出させるインスタレーション作品を多く手がける。
http://www.shinjiohmaki.net/


床一面に色とりどりの顔料で花を咲かせ、鑑賞者が踏みしめることで変化させる「ECHOES-INFINITY」。天井から垂らした10万本の白いロープで、波打つ雲海の向こうへと誘う「Liminal Air」。大巻は空間全体を軽やかに、大胆に変容させる。生と滅、破壊と創造といった、両極ながら流転し得る普遍の命題がそこにはあり、ポップな枯山水のような印象もときに抱かせる。

ECHOES -INFINITY-  2005
Pigments, felt, nonflammable cloth, fluorescent lights, acrylic cases
撮影:渡部良治 写真提供:資生堂ギャラリー

「空間と物事のありようを、人という存在を通してとらえたい。小刻みな作業の連続から、大きな波、呼吸を生み出すことを意識しています。ともすれば巨大でマッチョなオブジェにもなりがちですが、いかに“ 彫刻”から“ 風景”に戻していくか、もよく考えます」

Liminal Air Descend - 2007  2007 Nylon strings, fluorescent lights
金沢21世紀美術館デザインセンター 撮影:山本糾

横浜トリエンナーレ参加作品では、市内各地でシャボン玉を大量発生させる。

「横浜の地を掘り返すと、150 年前の開港時からの歴史的なものがいろいろ出てくるそうです。でもその多くは、調査後に記念碑だけになる。そこで、過去から未来へと続く、記憶の再生のような作品をと考えました。泡を選んだのは、風景を支配するのでなく、溶け込んで消えていく存在だから。何かがあった/消えた場所、これから変わる/消えるかもしれない場所、そういう地に点々と機械を設置しながら回遊し、時の谷間を縫っていきたい」

一方、同時期に行う水戸芸術館の展示では、大きな一室の壁面に並べた乳白色のアクリル板に、やはり白色の粉末水晶と修正液を用いて、絶滅危惧種の植物を無数に描き込む予定。

「鑑賞時にはその人自身の鏡像も写り込み、ただし花々によってところどころ欠落する。自分も絶滅危惧種なのか、など、すべての存在の危うさや儚さへ思いを馳せる体験になるかもしれない」

こうした志向性からか、作品自体も展示後そのままの形で残すのは難しいものが少なくない。だが、作家の意思は明快だ。

「ある期間だけ存在したり、または時を挟んで復活したりするからこそ、確認できることもある。時間を超えて、作品を見た人たちの思いが交わり、会話が生まれ、いろんな人が関わっていけるといい」

消えゆくものの儚さと、ゆえに際立つ生への実感、そのサイクルが生み出す「永遠と一瞬」。鑑賞者の佇む風景が魅力的なのも大巻作品の特徴かと思うが、これは、世界はそれを見る者を含め、万物の関わり合いによって存在する、という大前提を思い出させてもくれる。
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